充血といえば忘れられない事があります。ある病院に初めて赴任した時のことです。前医から長く慢性結膜炎で通院の方がいました。メヤニもないのに充血の程度がやや強めで点眼剤を変えても軽快しません。気になりつつ、しばらく来院がありませんでした。ある日いらして「先生、実は私は脳腫瘍だったんですよ。」と告げられた時には、頭の中が真っ白になりました。頑固だった充血はきれいに消えていて脳外科のドクターも腫瘍が結膜への血管を圧迫していたのだろう、という話をされたそうです。脳腫瘍の術後経過も良く喜んで報告に来られたわけですが、「ごめんなさい。考えつきませんでした。」とお詫びして下げた頭をしばらく上げる事ができませんでした。
慢性結膜炎の方全員に「脳腫瘍かもしれないので検査しましょう。」というのは乱暴な非現実的な事ですが、それでもなかなか治らない結膜炎の方を診るたび、心の片隅を横切るエピソードです。
もうひとつ脳腫瘍といえば、昔ある小さなクリニックにお手伝いに行った時のことです。若い女性が「最近見えにくいのですが。」と言っていらっしゃいました。視力を測ると不安定で顔を左右に振られます。念のため視野を測ってみると、特徴的な視野狭窄がでました。脳腫瘍の視神経への圧迫を疑って脳外科に紹介したところ、やはり脳腫瘍でした。その方は長年無月経に悩み、ある大学病院に長く通っていらしたとの事で、その無月経も脳腫瘍が原因でした。ご本人のみならずご家族の方にも多大に感謝され、当然の事をしただけなのに、と面はゆい思いをしましたが、将来のある若いお嬢さんの重大な病気を眼科の分野から見つける事ができた事を、今でもうれしく思っています。
Director
院長
髙橋 眞理子
【診療方針】
当院は、新宿区市谷薬王寺町で2013年1月4日から開業しました、とってもアットホームな眼科医院です。地域の皆様に良質な眼科医療をご提供することを理念として、日頃から、皆様の体質や病歴、健康状態を把握し、診療とそして健康上のアドバイスなどもできる「かかりつけの眼科医院」を目指してまいります。 眼科の病気は、視力という生活にとって重要な機能と結びついていますが、ほんの些細な症状もあれば、時には、はっと胸を衝かれる重大な疾患を抱えた方に出会う場合もあります。大がかりな手術や最先端の検査が必要と判断した場合には、大学病院等の施設へのご紹介もさせていただきます。 常におひとりおひとりに丁寧で距離のない診察をと、心がけています。