いつまでも健康で長生きしたい、というのは昔から変わらぬ人類の夢ですが、生活環境が整って平均寿命がのびても、目が良く見えなければつまりません。人生をこれから楽しもうという中高年の方に特に気をつけていただきたいのは下の3つの疾患です。
いずれも、早期発見、早期治療が視力の維持に大切です。

糖尿病性網膜症
縁内障
加齢黄斑変性症

加齢黄斑変性症

加齢黄斑変性症というのは、眼底の他のところはまったく正常なのに、ものを見るのに一番大事な中心の黄斑部というところが年齢と共にいたんでくるものです。欧米では中途失明原因の第1位で日本でも徐々に増えつつあります。欧米型の食生活が原因かとも言われています。ものが歪んで見えたり、中心が暗く見えたり、メガネの度が急に合わなくなったり、という事があれば一度眼底検査をお勧めします。

黄斑変性症には、上の左のように、黄斑部の網膜の後ろの脈絡膜というところから病的な新生血管が伸びてくることで、出血したり滲出物がでたりする滲出型(ウェット型)と、右のように、地図状に萎縮する萎縮型(ドライ型)があります。  
治療は、レーザー光凝固、経瞳孔的温熱療法、放射線照射、手術としては黄斑移動術、新生血管抜去術、光線力学療法等です。最近注目されているのは病的な新生血管の成長を抑える物質を眼内に注射する方法です。このように様々な方法が試みられていますが、なかなか難しいのが実情です。

一旦変性した組織を元に戻す事は難しいのですが、__サプリメントが発症を予防するのに有効なのではないかと言われています。  
今、アンチエイジングが流行になっていますが、他の組織と同様目の老化の原因も活性酸素が有力視されているようです。活性酸素を抑える抗酸化ビタミンとして、ビタミンC、E、β-カロチン、抗酸化ミネラルとして亜鉛、銅が知られていました。

最近注目されているのはルテインという物質です。黄斑部の網膜や水晶体に多く含まれるもので、ルテインの黄色い色素が有害な青色の光線を吸収して黄斑部のダメージを少なくすると言われています。ルテインは人間の体内では産生されず、年齢と共に減少してきます。しかも黄斑変性症の方は、普通の方より低下している事がわかってきました。ルテインを含むサプリメントを摂ることで発症を予防できる可能性が高そうです。

上の左は、幾度か手術を受けられたのですが残念ながらうまく回復されなかった方の写真です。幸いにも右の写真のもう片方の目は今のところ問題なく、視力低下もないのですが、予防のため熱心にサプリメントを摂取されています。

今年、京都大学iPS細胞研究所所長、山中伸弥教授がノーベル賞を得られた事は、昨今の暗い新聞の紙面を一変する素晴らしい事柄でした。

爽やかなスポーツマンであられ、気取りのない真摯な話しぶりには誰もが魅了されます。

今までに日本が受賞した科学分野のノーベル賞の研究は、素晴らしいとは思うものの、雲の上のできごとで、私の貧弱な理解力にはあまる事でした。

今回の山中教授が受賞されたiPS細胞の研究は、誰もが夢見る画期的な治療が現実になるという意味でも、私たち門外漢を含めて大きな希望を与えてくれました。

この加齢黄斑変性症は、その恩恵を一番早く受ける疾患となるかもしれません。損傷した網膜がiPS細胞を使って健全なものに置き換わる研究が始められようとしています。

Director
院長
髙橋 眞理子

【診療方針】
当院は、新宿区市谷薬王寺町で2013年1月4日から開業しました、とってもアットホームな眼科医院です。地域の皆様に良質な眼科医療をご提供することを理念として、日頃から、皆様の体質や病歴、健康状態を把握し、診療とそして健康上のアドバイスなどもできる「かかりつけの眼科医院」を目指してまいります。 眼科の病気は、視力という生活にとって重要な機能と結びついていますが、ほんの些細な症状もあれば、時には、はっと胸を衝かれる重大な疾患を抱えた方に出会う場合もあります。大がかりな手術や最先端の検査が必要と判断した場合には、大学病院等の施設へのご紹介もさせていただきます。 常におひとりおひとりに丁寧で距離のない診察をと、心がけています。

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