角膜内皮障害

角膜の一番内側にある内皮は、角膜の透明度を保つ重要な役割を持っています。ところが内皮は、上皮と違って一度傷ついて脱落すると分裂してまた数が増えるのではなく、周りの細胞が大きくなって脱落した細胞の部分を補おうとするのです。  
内皮が脱落するのには、加齢や、外傷、手術、炎症など様々な原因がありますが、コンタクト装用のための酸素不足は、損傷に気づかないまま進行する見逃してはいけない要因です。

これは、非常にきれいな内皮の写真です。まるで蜂の巣のようにそろった細かい細胞がぎっしり並び、CD(細胞密度:1平方当たりの細胞数)が3175と多くて、CV(細胞の大きさのバラつき)が20と粒が揃っていて、6A(6角形の細胞の割合)が73%とほとんどです。この方は17歳で、使い捨てのワンデイタイプのコンタクトを使い始めて半年の方です。いつまでもこの状態を保たせられるようにと願わずにはいられません。
「コンタクトはハードがいいですか、ソフトがいいですか?」というのはよくある質問です。以前であれば答えは決まっていました。「目にとってはハードレンズが良いので、どうしてもハードの装用が痛くて無理な方だけソフトにしてください。」と。ここにきて使い捨てのソフトレンズがでてきました。従来のソフトレンズに比べ汚れは少ないものの、角膜の酸素不足は解消されたわけではないので、ハードレンズがまだ良い、というのが眼科での一般常識となっています。しかし日々細隙灯で診ていると、ハードレンズの長期装用の方で、フィッティングをどう頑張っても、角膜の特に3時、9時の方向に深い傷がついたり、瞼裂班という結膜の盛り上がりが大きく充血しているのを診るたびに、本当にハードレンズが目に良いのだろうか?という疑問を感ぜずにはいられませんでした。

上の左は35歳の方で15年ほどハードレンズをお使いの方です。やや不ぞろいにはなっているものの細胞数もよく保たれています。右は31歳の方でソフトレンズを17~8年使われた方ですが、細胞数が減り、大小不ぞろいが目立ちます。この2枚だけを比べるとやっぱりハードが良いのかな、と考えてしまいます。

ところが、上の左はソフトレンズを20年使い続けた37歳の方ですが細胞数はかなり保たれ大小不同も目立ちません。右はハードレンズを20年使われた44歳の方です。細胞数が減り、大小不同が目立ちます。

上はハードレンズを40年使われた62歳の方です。ご本人も乱れに驚かれてコンタクトからメガネにされました。  
これをみると、一概にハードだからソフトだからという事ではないように思われてきます。日々の装用とケアに気をつけていただくよう、私どもももっとご注意を熱心にしていかなければいけないとスタッフとも話をしています。

最後に84歳の方の内皮です。まぶたのトラブルで慢性的に角膜に傷がついている方ですので心配しながら検査してみました。細胞数はしっかり保たれ、バラつきもありません。願わくば私どもも全員がこういう角膜を保ちたいものです。

Director
院長
髙橋 眞理子

【診療方針】
当院は、新宿区市谷薬王寺町で2013年1月4日から開業しました、とってもアットホームな眼科医院です。地域の皆様に良質な眼科医療をご提供することを理念として、日頃から、皆様の体質や病歴、健康状態を把握し、診療とそして健康上のアドバイスなどもできる「かかりつけの眼科医院」を目指してまいります。 眼科の病気は、視力という生活にとって重要な機能と結びついていますが、ほんの些細な症状もあれば、時には、はっと胸を衝かれる重大な疾患を抱えた方に出会う場合もあります。大がかりな手術や最先端の検査が必要と判断した場合には、大学病院等の施設へのご紹介もさせていただきます。 常におひとりおひとりに丁寧で距離のない診察をと、心がけています。

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